【開門】
『ようやくだな。』
アーサーは今まで静かだった門の裏側で人が慌ただしく動く気配をいち早く感じる。
そして暫くすると閂を引き抜こうとする軋み音が門の外にいるサアラ一行にも聞こえてきた。
アーサーは騎兵全員に乗馬を命じる。
「姫様、門が開きます。」
馬車の窓から顔を出し、前方を伺っていた侍女が嬉しそうに報告してくる。
「いよいよね・・・」
一方のサアラは全く油断していない。
危険は少ないとは言え、こちらが武装している以上、門の中でもそれなりの準備をしているだろう。
こちらを中に引き入れてから退路を断ち、殲滅にかかる可能性だってゼロとは言えないのだ。
たとえ双方にそんなつもりが無くても、偶発的な衝突が起きる可能性は否定できない。
『マクミラン卿、頼みましたよ。』
サアラは運を天に任せ、その時を迎えようとしている。
待つ事3時間近く、ついに南門は再開した。
儀仗兵の部隊は馬車を取り囲むようにして整然と堀を渡り、門の直前に来たところで一時停止する。
「紋章旗を・・・」
先頭にいる旗手から「草冠に女神」の紋章旗を受け取ったアーサーは、それを右手に高々と掲げながら単騎で門を潜り抜け、先頭を切って王都に入った。
内で待っていたのは南門を警備する兵士と王室騎士団の騎兵だ。
南門の内側にズラリと並んだ彼らの注目を一身に浴びながら、アーサーは余裕たっぷりの表情で言い放った。
「お役目大儀!」
そして彼は後ろを振り向くと、門の外で待つ儀仗兵に命じる。
「出発!」
「応!」
100名の儀仗兵による迫力に満ちた鬨の声が上がった。
待機していた騎兵は思わずびくりと体を震わせるが、アランの命令を忠実に守って静観の姿勢を崩さない。
アランの予言通り、それ以上は何も起こらず、儀仗兵と供にサアラを乗せた四頭立ての馬車は、アムロード家の王都屋敷に向けて静かに去って行った。
第1部 了
※2022年12月31日更新
ここまでお読み頂き、本当にありがとうございます。
連載開始より、ほぼ毎日更新のペースでサアラの王都帰還までを一気に書き下ろしました。
年内に第1部を完結させる事が出来てホッとしています。
また本作に1万以上のPVを頂き、感謝申し上げます。
過去の私の作品で、1万PVを超えたものはあるのですが、これほど短期間に、これほど多くのPVを頂いたのは初めての経験です。
第2部では新たな登場人物や、サアラとソフィアの関係にも変化が訪れます。
皆様、どうぞよいお年を。
第2部にもご期待ください。
※2023年1月1日午前7時に再開予定です。




