【検分Ⅰ】
南門に残された警備兵たちは途方に暮れていた。
門の外では100名に及ぶアムロード家の兵士たちが、大門が開くのを今か今かと待ちわびている。
ところが頼みの綱である隊長は、王宮に行ったきり戻ってこない。
彼らは祈るような気持ちで隊長の帰りを待っていた。
そんな時、南門に隣接した警備兵詰め所のドアがノックされる。
『戻ってきた!』
そう思った兵士たちは大急ぎでドアを開けた。
「隊長!・・・えっ?」
ドアの外にいたのは、彼らが期待した人物ではなかった。
「お邪魔するよ。」
「アラン様!?」
国王の右腕の突然の来訪に、警備兵たちは慌てふためく。
「あの・・・申し訳ありません。隊長は今、不在でして・・・」
「知っているとも。隊長さんには別の仕事をお願いしているからね。それよりちょっと上から見させてもらうよ。」
兵士たちの返答を待たずに入室したアランは、案内も無しに階段を上っていく。
そのまま望楼に上ったアランは、門の外で待つサアラ一行の様子を注意深く観察する。
『ふむ、やはり儀仗兵か。そんな事だろうと思った。』
儀仗兵たちは確かに武装している。
しかし彼らが持っている武器は、見た目が優先された儀式用の武器であり、実戦で使用する武器とは用途が全く異なるものだ。
一目でそれを見抜いたアランは、これが想定内の事態である事を確信する。
『そうなると儀仗兵を率いているのは・・・』
アランは一行の中からひときわ背の高い男を見つけ出すと、納得したように頷く。
「やはり全て予想通りという事か・・・それにしても陛下にも困ったものだ。アムロード卿の性格を考えれば、この程度の反撃が来る事は容易に予想できるだろうに。」
独り言のようにそう呟いたアランは望楼の反対側に移動し、下を見る。
『早いな・・・』
南門の内側には、完全武装の騎士が続々と集まりつつあった。
彼らが持っているのは実戦用の使い込まれた武器だ。
その様子を見たアランは満足そうに頷く。
ちょうどその時、裏門から戻ってきた警備隊長が報告のために近付いてくる。
「アラン様、任務完了です。」
「ご苦労さま。」
「ところで南門はいかがいたしましょうか?」
「何も問題は無い。門を開けてやりなさい。」
「はい。しかし・・・」
「心配せずとも何も起こらないよ。」
アランは隊長の肩をポンポンと二回叩くと、もうここには用は無いとばかりに、さっさと望楼を降りていった。
次回「検分Ⅱ」は、12月26日(月)午前0時10分頃に公開予定です。
どうぞお楽しみに。




