【押し問答】
「止まれ!」
アーサーの号令の下、サアラ一行は門前でピタリと停止した。
閉じられた南門に隣接した望楼からは、10名近くの警備兵がこちらの様子をじっと伺っている様子がサアラの目にもはっきりと見える。
騎乗のまま隊列の先頭に進み出たアーサーは、その望楼に向けて大音声を発する。
「ここにおわすはアムロード侯爵家が息女、サアラ・アムロード様である! 恐れ多くもクロスリート国王・ユリウス四世陛下の勅許により王都に馳せ参じた。開門! 門を開けよ!」
望楼の窓にいた警備兵たちが一斉に姿を消し、しばらくして姿を現した一人の警備兵が大声で返答する。
「ご用向きは承った。貴殿らの通行については王宮に確認中故、しばらくお待ち頂きたい。」
「何を申すか!サアラ様の追放が解かれた事は公然の事実ではないか。王宮への確認など不要! 貴様では全く話にならん、すぐに責任者を呼べ!」
「今はあいにく責任者が不在故、何卒暫しの猶予を願いたい。戻り次第お伝え致す。」
望楼からそれ以上の反応は無く、未だ大門は閉じられたままだ。
アーサーは踵を返し、サアラの許に向かう。
「姫様、連中はあのような事を言うておりますが、如何されますか?」
「マクミラン卿、こちらの陣容とて決して穏やかではありません。王宮への確認は仕方ないところでしょう。それに確認に行ったのが責任者だとすれば、責任者がいないというのもあながち嘘ではないように思います。まずは暫く待ちましょう。」
「御意」
両者はそのまま睨み合いのような状態になり、20分以上経っても状況に全く変化は無かった。
『いつまで待たせるつもりだ・・・』
外で待つ兵士たちの間にピリピリした雰囲気が漂い始める
そんな時、サアラの側近を務める侍女がアーサーの許を訪れる。
「如何されたか?」
「姫様より伝言。騎兵は直ちに下馬し、馬に水をやれとの仰せです。」
「承知した。」
サアラの命に従って騎兵全員が下馬し、馬に水をやる事で、待たされ続けた騎士たちのイライラが徐々に解消されていく。
その様子を見ていたアーサーはサアラの的確な判断に感心する。
『長丁場に備えよという事か・・・さすがは姫様、良く観察しておいでだ。こちらの懸念に対し、先回りで手を打たれたか。』
長期戦を覚悟したアーサーも最後に下馬し、直立のまま大門を睨みつけていた。
次回「検分Ⅰ」は、12月25日(日)午前0時10分頃に公開予定です。
どうぞお楽しみに。




