【敵の正体Ⅱ】
「それではお前は奴らを王都に入れろと言うのか?」
「御意」
「本当に中に入れて大丈夫なんだろうな?」
「恩赦を出したのは陛下御自身ですよ。サアラ様はそれを受けて戻られたのです。入れない方が問題です。」
「・・・分かった、奴らを王都に入れるのは仕方がない。だが万一の場合もある。こちらも騎兵を出せ。」
「・・・承知しました。では私はこれから南門の様子を見て参ります。」
「アラン! 騎兵は完全武装だぞ、いいな!」
「仰せのままに。」
ようやく国王から解放され、執務室の外に出たアランは、低い声でつぶやく。
「やれやれ、何とも臆病なお方だ。そうであるなら最初から危ない橋など渡らなければいいものを・・・」
そして国王の命令を騎兵たちに伝えるために、王室騎士団の本部に向かおうと一歩を踏み出した時、アランは意外な人物から呼び止められた。
「アラン様」
彼を呼び止めたのは、先程まで一緒に執務室にいた南門の警備隊長だった。
「何故ここにいる? 持ち場に戻ったのではないのか?」
「それが最初は戻ろうかと思っていたのですが、南門に今戻っても、王宮からの指示を待つ以外にやる事もないですし、それならば向こうでイライラしながら待つより、今ここでアラン様にご指示を頂けないだろうかと、お待ちしておりました。」
「せっかく待ってもらっていたのに悪いんだけど、今から私自身が南門に行って状況を確認する事になった。だから結論はそれからになってしまうね。」
「そうでしたか・・・分かりました、それでは私も一緒に参ります。」
「いや、それには及ばないよ。それよりも一つ頼みがあるのだが?」
「何なりとお申し付けください。」
「それは頼もしいね・・・なに、簡単な仕事だ。これから正門と裏門に行き、門の外に何も異常が無い様であれば、門を開ける様に伝えて欲しい。全ての大門があまり長く閉じたままだと、混乱が大きくなるからね。」
「分かりました。今からひとっ走り行ってきます!」
「頼んだよ。」
隊長はアランにペコリと頭を下げると、すぐに飛び出していった。
「さて、私も行くとするか。」
アランは今度こそ、王室騎士団の本部に向かうのだった。
次回「歴戦の勇者」は、12月23日(金)午前0時10分頃に公開予定です。
どうぞお楽しみに。




