【敵の正体Ⅰ】
「アムロード家だと・・・まさか謀反か!?」
「それは無いでしょう。」
明らかにうろたえている国王の発言を、アランは即座に否定する。
「なぜ分かる?」
「アムロード卿は現在、王都に留まっておいでです。謀反の首謀者が王都に留まっているはずがありません。」
王家が恩赦を発表した後、アランは密かにエドルの動静を探らせていた。そのためアランはエドルの居場所を正確に把握している。
完全に言い負かされた形になってしまったが、それでも国王は諦めない。
「いや、分からんぞ。大門を中から開けて手引きをするつもりで、わざと王都に留まっているのかもしれん。謀略は奴の専売特許だからな。」
『それはあなたも同じでは?』とアランは思ったが、あえて口には出さず、あくまで疑問に答えるという態度に終始する。
「大門を中から開けるだけなら、アムロード卿がわざわざご自分でなさる必要はありません。部下に命じれば良いだけの話です。それにもし密かに手引きをするつもりなら、夜が明けた後に堂々と隊列が来るはずがありません。必ず真夜中のタイミングを狙うでしょう。」
「だとしたら奴らはいったい何のために王都へ来たのだ?」
「南門に来たのがアムロード侯爵家の部隊という事であれば、答えは一つしかありません。」
「何だと?」
「陛下が追放されたサアラ様が戻ってこられたのですよ。」
「何だと!」
「先程の報告では、部隊には人が乗る大きな馬車が同行していたという話でした。つまり馬車で移動させなけばいけない程の高位の人物がいるという事です。そしてアムロード家でエドル様以外の高位の人物、しかも王都に用がある人物となれば、対象者はたった一人です。」
「サアラ・アムロードか・・・」
「南門に来たのがサアラ様とその護衛部隊と考えれば、全ての疑問が解消します。」
「それにしても何故小娘は予告も無しに戻って来たのだ。こういう事は、あらかじめ予告するのが常識ではないのか?」
「それは今回の恩赦に対するアムロード家からの『不快感の表明』でしょう。恩赦が取り消せない以上、このような方法でアムロード家の意思を我々に伝えたのだと思いますよ。」
「エドルめ! ふざけた真似をしおって。」
「三侯には軍隊を王都に入れる権限がありますし、それを予告する義務もありません。つまり今回のアムロード家の行動に落ち度はありません。」
さすがの国王も完膚なきまでに論破され、降参するしかなかった。
次回「敵の正体Ⅱ」は、12月22日(木)午前0時10分頃に公開予定です。
どうぞお楽しみに。




