【敵襲Ⅱ】
「敵襲だと!?」
国王は驚きのあまり椅子から立ち上がりそうになる。
「まさか・・・デール公国か!?」
国王は緊張関係にある隣国の名を挙げた。
「いえ、デール公国ならば、まずグリーンヒル砦から知らせが来るはずです。」
筆頭秘書官のアランがその可能性を冷静に否定する。
「では一体どこだ?」
アランはその質問に答える前に、使者に確認する。
「それを知らせてきたのは誰だ?」
「南門の警備隊長です。」
「その者をここに呼べ。」
「しかし・・・」
「非常時故構わん。陛下、よろしいですな。」
国王が無言で頷いたのを確認したアランはもう一度命令する。
「いいからすぐに呼べ。」
「承知しました。」
間もなくやってきた警備隊長は、国王を目の前にして、ひどく緊張していた。
アランは彼の緊張を解くように、穏やかに質問する。
「敵の数は?」
「私が確認した限りでは騎兵と歩兵を合わせておよそ100人でした。」
『たったの100人?・・・妙だな。』
アランは「敵」の意図を図りかねていたが、その前に気になる事があった。
「南門はどうなっている? 門は閉じたのか?」
「門はすぐに閉じました。それからこちらに来る前に部下に命じて、他の門についても閉じる様に伝えさせました。」
「騎兵と歩兵以外に見たものは?」
「騎兵と歩兵以外にですか・・・そういえば馬車もありました。人が乗る大きな馬車です。」
「馬車か・・・なるほどね。分かった、よくやってくれた。もう下がっても良いよ。」
隊長を下がらせたアランは、国王に懸念を伝える。
「敵の正体を確かめるのが先決ですが、敵の数が100人だけというのが気になります。」
「どういう意味だ?」
「数が少なすぎます。敵がオールドリートを本気で落とすつもりなら、最低でも2000人は必要です。100人程度でいったい何をするつもりなのかが分かりません。」
「後から本隊が来るかもしれんじゃないか。」
「確かにその可能性は否定できません。ただ先程から考えていたのですが、彼らは『敵』ではないのかもしれません。」
「敵ではないだと?・・・敵ではない者がわざわざ武装して南門にやってくるとでも言うのか?」
「はい、例えば今の報告で・・・」
アランが自らの予測を伝えようとしたその時、第二の使者が執務室に駆け込んでくる。
「南門より報告!見張りの者が紋章旗を確認しました。」
国王は反射的に立ち上がって先を促した。
「何処の紋章か!?」
「紋章は『草冠に女神』、アムロード侯爵家です!!」
次回「敵の正体Ⅰ」は、12月21日(水)午前0時10分頃に公開予定です。
どうぞお楽しみに。




