【南門の異変Ⅰ】
三日後、王都南門
クロスリート王国最大の都である王都・オールドリートは馬車や荷車が通れる大門が三つと、人が出入りするだけの小門が四つの、合わせて七つの門で外部とつながっている。
王都にはランドンのような高い城壁は存在しない。
その代わり王都の外周は防衛のための堀で囲まれている。
さらに堀には近くの川から水が引き込まれており、もし敵勢が押し寄せた場合でも、容易には突破出来ない構造になっている。
そして王都の各門にはこの水堀を渡るための橋がかけられており、いざという時には橋を落として籠城戦に臨む事も可能だ。
南門は王都に三つある大門の一つで、交易と防衛の要となる重要拠点である。
そのため南門が解放される夜明けから日没までは常に十名以上の警備兵が常駐し、門の警護にあたっている。
その日の朝、南門に勤務する若い警備兵であるジョナサンは、門に隣接する警備兵詰め所の最上階にある望楼で早朝の見張り当番を勤めていた。
怪鳥騒動が収まって以降、王都は平和であり、見張りは正直なところ退屈な任務である。
ジョナサンはあくびを噛み殺しながら、外の様子を監視していた。
『・・・何だあれは?』
ジョナサンが開門と同時に見張りに就いてから、既に1時間ほど経過している。
彼は夜が明けてすっかり明るくなった青空と地平線との境界付近に人馬の隊列を発見した。
まだ距離が遠いため隊列の全貌を掴む事は出来ないが、かなり大規模な編成である事だけは確かだ。
『外国からの隊商だろうか?』
そう考えたジョナサンは目を凝らして隊列の様子を観察する。
隊列はゆっくりと南門に近付いてくる。
彼らがここを目指しているのは明らかだ。
そして更に距離が近づくにつれて、隊列の全貌が明らかになる。
それは100名を超える大集団だった。
『違う・・・これは絶対に隊商なんかじゃない!』
そしてついに軍旗のような旗を掲げた騎馬を先頭に、多数の騎馬の存在を確認したジョナサンは顔面蒼白になった。
彼は王都に迫る異変を大声で階下の仲間に知らせる。
「大変だ! 誰か来てくれ!」




