【ターゲットⅤ】
「まさかとは思うけど、ミス・ブルームは私とパトリシア陛下が似ていると言われるの?」
「私から見てお二人は同じ雰囲気をお持ちです。」
「でも私は陛下と違って研究者ではないわ。」
「ミス・アムロードは著名な魔法研究者でもあったお母さまの血を受け継いでおられます。現時点で研究者ではなくても、その素養をお持ちであると考える方が自然ではないでしょうか?」
『素養かぁ・・・・正直そう言われても全然自覚がないのよね。』
サアラは自身が研究者になりたいなどと思った事は、今まで一度も無かった。
ケイトが言う通り、ハンナ・アムロードは一流の魔法研究者であったが、母親と身近に接した記憶が無いサアラがその影響を受ける事は無く、彼女にとって研究や研究者というのは遠い世界の存在だった。
「私は陛下のような自由人にはなれない。あなたの見立てには同意しかねるわ。」
「ではどうしてミス・アムロードは王都から追放されようとしたのですか?それには必ず動機があるはずです。お二方に共通する動機、それは自由へのあこがれです。それ故に陛下は自らの意志で自由になろうとし、ミス・アムロードは王都から追放される事で自由になろうとした・・・受け身かどうかは別として、本質的に同じものではないのですか?」
今や攻守はすっかり逆転していた。
ケイトの分析は鋭さを増していく。
「先程ミス・アムロードは『陛下の事が理解できない』とは言われませんでした。『陛下の真似はできない』と言われたのです。それはつまりパトリシア陛下の行動原理が自分には理解できると言われているのと同じです。理解はできても、それを実行する勇気が無いだけという事であれば、お二人が非常に似ていると私が感じるのは当然だと思います。」
サアラは言葉を失い、その場を沈黙が支配する。
重苦しい沈黙を破ったのはサアラでもケイトでもなかった。




