【ターゲットⅢ】
それから更に一週間が過ぎ、あらゆる調査が空振りで終わったサアラは遂に決断する。
それからの彼女の動きは素早かった。
サアラはその日のうちに王宮に連絡を取ると、翌日にはケイトとの面会の約束を取り付けていた。
そして約束の日、サアラは王宮北の館に再び案内された。
「ようこそお越し下さいました、ミス・アムロード。」
「ごきげんよう、ミス・ブルーム。」
パトリシア王妃との仲介役という自身の役割を自覚しているケイトはテキパキと話を進めようとする。
「本日のご用向きはパトリシア陛下への面会の取り次ぎという事でよろしいのでしょうか?」
「いいえ、違います。」
サアラはケイトの予想をバッサリと切り捨てた。
「今日お伺いしたのは、ミス・ブルームご自身の事についてですわ。」
それまで穏やかだったサアラの表情と口調が一変する。
「ミス・ブルーム、悪いけどあなたの事は色々調べさせてもらったわ。」
尋常ではない様子のサアラを前にしたケイトの表情が自然に引き締まる。
「ケイト・ブルーム、年齢は23歳。ブルーム家の養女になる前の経歴は不明。それ以前のあなたが何者であるか、私がどんなに手を尽くしてもヒントすら掴めなかったわ。」
「・・・・・・」
「私は最初、ブルーム家があなたの過去を意図的に隠蔽しているのだとばかり思い込んでいました。でもね、調べていくうちに私は自分の間違いに気が付いた・・・それにしたって情報の消され方が見事過ぎる。完璧過ぎるのよ。」
「!」
「それで考えが変わったの。あなたの過去は消されたんじゃない。最初からそんなものは存在しないんじゃないかって。」
それまでポーカーフェイスを保っていたケイトの表情が初めて変化する。
「あなたが私の質問に答える義務が無いなんて事は最初から分かっているわ。それを承知の上であえて問います・・・ケイト・ブルーム、あなたはこの世界の人間ではない。私が何を言いたいか、あなたなら分かるはずよね?」
サアラの追及をここまで黙って聞いていたケイトは、重い口を開く。
「・・・私が転生者であるかどうか、それを知ってミス・アムロードはどうされるおつもりですか?」




