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【ターゲットⅡ】
「何よこれ、肝心な事がまるで分からないじゃない・・・」
サアラがケイト・ブルームの身辺調査を始めてから既に1週間、彼女が漏らした感想は現在の状況を正確に言い表していた。
表面的にはケイト・ブルームの情報は何も隠されていない。
実際、彼女の年齢やブルーム家の養女である事は普通に公開されている。
そのため当初、身辺調査は簡単に進むものと思われた。
仮にケイト・ブルームの出自が秘密にされていたとしても、王国内でアムロード家が張り巡らせた情報網を駆使すれば突破できると、楽観的は見通しを立てていたのだ。
ところが表面的な情報から一歩踏み込もうとすると、途端に調査は暗礁に乗り上げた。
彼女の秘密は巧妙に守られていた。
ケイト・ブルームが何者であるか、「隠している事自体を隠している」という表現がぴったりだ。
だから興味を持って調べない限り、彼女に秘密がある事すら気が付かない。
偽装は完璧だった。
『これはもう、最終手段を使うしかないか・・・』
サアラが考える最終手段、それは「本人に直接聞く」というかなり無謀なものであった。




