【ソフィアの直感Ⅰ】
「そのような事があったのですね・・・」
王宮の談話室でサアラからパトリシア王妃との面会の事実を告げられたソフィアは、複雑な表情を見せる。
「ソフィアさんはパトリシア陛下が表舞台に出ない理由を知っていたの?」
「サアラ様は既にご存じのようですね・・・まあ大体の事情はウィルド殿下からお聞きしていましたが、まさか私的な研究のために国事をほったらかしにする王妃が本当に存在するなんて、最初は信じられませんでした。」
「全ての責任を放棄して逃げ出したい気持ちに襲われる事は、王族に限らず誰にでもあるわ。だけどそれを実際にやってしまうなんて普通は不可能よ。逆に王妃だからこそ、そのような非常識が通用してしまうのでしょうけど・・・」
「結局これは国家機密という程ではありませんが、理由が理由なだけに仕方なく秘密になっているというのが実情です。」
「確かにあまり堂々と他人に話せるものではないわね。」
「ウィルド殿下のお言葉を借りれば『王国史上最もどうでもいい秘密』なのだそうです。」
「・・・殿下の気持ちをお察しするわ。」
サアラは神妙な顔で感想を述べた。
「ところでパトリシア陛下との面会について、私に明かしてしまって構わないのですか?口止めされたのでは?」
「それについては陛下の許可をいただいているから心配いらないわ。」
「それなら安心です・・・それにしてもパトリシア陛下はなぜ、サアラ様にご興味を持たれたのでしょうか?」
「さあ・・・私からは何とも。」
パトリシアは面会の事実については許可を出したものの、自身がこの世界の秘密を色々と知っている事については固く口止めされていたため、サアラとしては言葉を濁すしかない。
一刻も早く話題を変えたいサアラは、少し立ち入った質問をソフィアに投げかける。
「この際だから聞いてしまうけど、ソフィアさんから見てパトリシア王妃とはどのようなお方なのかしら?あなたの率直な印象をお聞きしたいわ。」
次回「ソフィアの直感Ⅱ」は、9月3日(水)午前7時10分頃に公開予定です。




