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追放ルートを目指します!  作者: 天空ヒカル
第10部 転生者
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【ラストロマンスⅣ】

パトリシア王妃は原作ゲームにも登場する人物だ。


ただ当然ながらゲームの主要キャラクターではないため、彼女の出番は非常に少ない。


だから原作ゲームに精通しているサアラですら王妃のパーソナルデータは皆無に等しい。


つまり王妃はこの世界だけではなく、ゲームの中でも謎の人物なのだ。


『設定が存在しないから強制力も働かずに、パトリシア王妃は自由に動けていたという事?』


そんな可能性を考えていたサアラに対し、王妃は(さら)なる爆弾を落とす。


「あなたのお母さんと私は親しかったのよ。」


「陛下は母と知り合いだったのですか!?」


「あなたのお母さん、ハンナ・アムロードは研究者だったけど、私も同じなの。彼女は魔法、私は歴史。専門分野こそ違っていたけど、同じ研究者として共通点は多かったわ。違っていたのは彼女が研究者と高位貴族としての立場を上手(うま)く両立させていたけれど、私にはそんな器用な真似ができなかったところね。」


『ああ、この人は研究オタクなんだ・・・』


王妃が不在の理由は実に単純だった。


彼女は王妃としての責任をすっかり放棄して自分の研究に没頭していたのだ。


それを確かめるため、サアラは王妃に質問する。


「歴史の研究は国にとっても有益かと存じます。しかしながら国の(かなめ)である王妃が長期間不在のままでは王国の運営に不都合が生じるのではないでしょうか?」


「あなたもアランと同じ事を言うのね。でも大丈夫。心配ないわ。跡継ぎのウィルドはしっかり育ってくれたし、私がいなくても特に問題は無いのよ。」


サアラの質問に対してパトリシア王妃は全く悪びれる事なく、大丈夫だと言い切った。


王妃本人は大丈夫かもしれないが、アランを始めとした周囲の人間にとっては、一つも「大丈夫」では無かっただろうと、サアラは推測する。


それを何とか「問題ない」状態までにしたアランの努力や苦労を思うと、サアラは彼に同情を禁じ得なかった。


「それでもウィルド王太子の結婚式では王妃陛下の姿をお見掛けしました。」


「それは愛する息子の結婚式だもの、私だってそれくらいわきまえていますとも。ただ夜遅くなるから披露宴には出席しないってチョットだけ()()たらアランに死ぬほど説教されたけど・・・」


『いや披露宴は絶対出なきゃダメでしょう!? そもそも夜遅くなるのが嫌だっていう理由が既におかしいです。王族として公務を何だと思っているのですか!?』


心の中でサアラはアランと同じ結論に達した。

そしてそれは貴族や王族であれば議論の余地がない結論だ。


だがそんな常識はパトリシア王妃には通用しない。


王妃は世間で噂されるような病気でも何でもなかった。


いや、ある意味では普通の病気よりも()()が悪いかもしれない。

何しろ患者本人に病気を治す気が全く無く、むしろ今の状態を理想と考えているからだ。


このタイプに研究拠点など与えたら、それは自分の「城」に引きこもって出てこなくなるに決まっている。


元の世界で会社員兼引きこもりゲーマーだったサアラにとって、王妃の思考パターンと行動パターンは全てお見通しだった。


『そう言えばお母様も公務がない時には西の離れに入り浸っていたと聞いているし、研究者ってそういう人種なの?それとも偶然タイプが似ていただけ?・・・どちらにしても二人は間違いなく気が合ったでしょうね。』


「私とハンナは互いの研究拠点を行き来するような間柄だったのよ。彼女が()()に来た事は何度もあるし、私も西の離れに何回もお邪魔したわ。」


今まで明るかった王妃の態度が、ここで大きく変化する。


「だから彼女が亡くなったと聞いた時は本当に信じられない気持ちだった・・・」

次回「ラストロマンスⅤ」は、8月19日(火)午前7時10分頃に公開予定です。


どうぞお楽しみに。

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