【ラストロマンスⅡ】
そこは王族が来訪者と正式に会うための謁見所ではなく、落ち着いた雰囲気の談話室だった。
部屋自体はそれほど広くない。
そして目的の人物は目の前に座っていた。
サアラにとって、これほどの近距離で王妃を見るのは初めての経験である。
謁見に備えて正装しているサアラに対し、王妃の方は至って普通の服装だ。
ケイトから紹介を受けたサアラは王妃に挨拶する。
「アムロード侯爵家のサアラ・アムロードと申します。本日は王妃陛下への謁見をお許し頂き、誠にありがとうございます。」
「謁見というほど大げさなものではないわ。よく来てくれましたね、ミス・アムロード。」
王妃は微笑を浮かべており、少なくとも怒っているようには見えない。
『良かった・・・どうやらお叱りを受けるために呼び出された訳ではないようね。』
サアラは自分が知らないうちに王妃の機嫌を損ねていたのではないかと恐れていた。
そのため、王妃の態度は彼女を少しだけ安心させた。
「ケイト、あなたは下がって良いわ。」
「承知しました。何か御用の際はお呼びください。」
ケイトが退出し、談話室にいるのは王妃とサアラの二人だけだ。
このタイミングを待っていたのだろう。
パトリシア王妃はサアラを震撼させる単語を言い放った。
「ラストロマンス」
次回「ラストロマンスⅢ」は、8月17日(日)午前7時10分頃に公開予定です。
どうぞお楽しみに。




