【金色の紋章Ⅳ】
「パトリシア陛下・・・」
招待状に記された個人紋章の持ち主、すなわちサアラを招待したのはこの国の王妃だった。
パトリシア・クロスリート。
現国王であるユリウス四世の妻であり、ウィルド王太子の母親でもある彼女は言うまでもなく王国内で最高位の女性なのだが、自身が表舞台に出る事はほぼ無く、謎の存在というのがピッタリの表現だった。
貴族の中には彼女の存在自体を疑う者までいるほどだ。
要するにパトリシア王妃がどのような人物なのか、信頼できる情報は皆無だった。
当然ながらサアラも王妃との個人的な接触は無く、ウィルド王太子の結婚式の際に遠くから姿を見かけたのが最後になる。
『王妃が私に一体何の用だろう?』
サアラの疑問は当然だったが、この国の最高位の女性からの招待を正当な理由もなしに断れる訳がなく、招待に応じるしか選択肢は存在しない。
せめて事前にソフィアと面会して情報収集をしておきたいところだが、相手が秘密の招待を望んでいる以上、それもできない。
さらに今回のような秘密の招待の場合、返事を出さない事が承諾の答えとなる。
結局サアラは何の準備もできないまま、招待当日を迎える事になった。
次回「ラストロマンスⅠ」は、8月15日(金)午前7時10分頃に公開予定です。
どうぞお楽しみに。




