【ロビンの決心Ⅱ】
二日後
朝食を終えたサアラの下にマーサがいそいそとやって来た。
マーサは真剣な表情でサアラに相談を持ちかける。
「お嬢様、ロビンの進路について、折り入って相談がございます。」
「何かしら。」
「今朝、ロビンに今日の仕事を指示したところ、彼女から進路についての相談を受けました。」
サアラは特に驚く様子もなく、黙って聞いている。
「ロビンは自分の進路として、侍女を希望したのです。」
「そう・・・」
「以前、お嬢様とロビンの進路について相談させて頂きましたが、私は侍女の話についてロビンにまだ何も言っておりません。それなのに彼女の方から侍女になりたいと言ってきました。」
どうしてこうなったのか分からないと言いたげなマーサに対して、サアラの方は全く動じていない。
その様子を見たマーサは、サアラに疑いの目を向ける。
「まさかお嬢様がロビンに何か言われたのではないでしょうね?」
マーサの疑惑に対して、サアラはそれを完全に否定する。
「私はロビンに対して侍女を目指しなさいなどと一言も言っていないわ。私はただ、リタの仕事ぶりを良く観察しなさいとロビンに命じただけ。だからあなたがロビンから聞いた侍女の話というのは、完全に本人の自由意思によるものだわ。」
「左様でございますか。」
「多分ロビンはリタの姿を見て、彼女なりに思うところがあったのでしょう。ただ彼女の決心が固まったというなら、こちらにとってもちょうど良い機会だわ。リタの後任は正式な侍女とそれを補助する見習い侍女の二名体制にします。」
「その見習い侍女として、ロビンをお考えなのですね。」
「そういう事。」
あっけらかんとしたサアラの様子を見て大きくため息をついたマーサは、サアラの提案に同意する。
「働き始めて二か月の見習いメイドを侍女に抜擢するなど、普通はあり得ない事です。しかし正式な侍女ではなくその補助という事であれば、それほど波風は立たないと思います。」
「マーサもそう思うでしょう? その上、ロビンの進路について関係者全員に知らせる事にもなる。どう? 一石二鳥の名案だと思わない?」
屈託のない笑顔を見せるサアラに対して、マーサは仕方がないといった表情になる。
「承知しました。侍女見習いはそれで進めるとして、後任の正式な侍女につきましては是非とも私の希望も取り入れて頂きたく存じます。」
マーサはサアラの「名案」を認めたものの、同時にくぎを刺す事を忘れなかった。
サアラとしても、これ以上波風を立てるつもりはない。
「もちろんそうさせてもらうわ。心配無用よ。」
こうしてロビンの進路が決定し、彼女は新しい夢である侍女に向けての第一歩を踏み出した。




