【初めてのお出かけⅢ】
私たちを乗せた馬車は「にしのはなれ」に着きました。
初めて見る「にしのはなれ」はとても大きくて、アムロード家のお屋敷にだって負けません。
だけど何だかさみしい場所にある古いお屋敷です。
ここは元々アムロード家のお屋敷だったそうです。
でもずっと使われていなかったので、今はお嬢様のお知り合いのモントレイ家にお屋敷を貸しているのだとサアラお嬢様から聞きました。
私たちを出迎えてくれたのは、モントレイ家のニーナ様です。
お屋敷の中でお嬢様がニーナ様とお話をされている間は、モントレイ家のメイドが二人のお世話をするので、私とリタさんは隣りの部屋でしばらくお休みです。
だけどこれはチャンスなのです。
私は思い切ってリタさんに聞いてみました。
リタさんは私が聞いた事にやさしく答えてくれました。
「お嬢様がミス・モントレイのお家を訪問されるのは良くある事だから、私もすっかり慣れているわ。私がお嬢様のお望みをあらかじめ分かっているように見えたのだとしたら、きっとそのせいね。」
でも私にはそれだけで今日見たような事が出来るようになるとはとても思えないのです。
だから私はどうしたらリタさんのようになれるかを聞きました。
「そうねぇ・・・どうしたら私の様になれるかは分からないけど、私が侍女として気を付けているのは、相手の立場に立って物事を考えるという事かしら。」
首をかしげる私を見たリタさんは、私にもわかるように言い直してくれました。
「ゴメン、少し難しかったよね・・・つまり私がもしお嬢様だったら、その時に何をして欲しいかを考えて、それをして差し上げているだけなのよ。そんなに難しい事をしているわけではないわ。」
私はお屋敷に来てからそんな考えでお仕事をした事は一度もありませんでした。
やっぱりリタさんは本当にすごいなあ・・・
サアラお嬢様が「何もしなくても、見ているだけで勉強になる」と言われたのは本当でした。




