【量刑判断】
サアラとエドルが王都に戻ってから二週間後
アランの指揮の下、満を持して供述書の内容を立証するための強制捜査が始まった。
供述書の情報に基づき、まず王都に潜伏していたグレンダ殺害の実行犯が逮捕され、それとほぼ時を同じくしてリヴェラーノ伯爵の王都屋敷に対する家宅捜索が断行された。
証拠隠滅を防ぐため、家宅捜索は何の予告も無く電撃的に開始された。
その結果、エドルを含めた捜索メンバーは決定的な物証をほぼ無傷で確保する事に成功した。
強制捜査が一段落したところで、王宮ではアランとエドルが今後の方針を話し合っている。
「強制捜査の結果、供述書とそれを裏付ける物証の両方が揃いました。これでリヴェラーノ伯爵の犯罪行為が立証された事になります。」
「後は量刑判断だな。基準はあるのか?」
「基準はあります。しかし絶対ではありません。それ以上に大きな影響を与えるのは被害者の心情になります。」
「被害者の心情?」
「つまり今回の場合であれば、被害者であるアムロード卿が相手に何を望まれるのかが、量刑判断の決定的要因になるという事です。」
「奴の運命は儂の一存で決まるという事か・・・被害者と言っても未遂だからな。実際に被害を被ったわけではない。」
「リヴェラーノ伯爵に対して、厳罰は望まれていないという事でしょうか?」
「そうだ。前にも言ったと思うが、あんな雑魚にいつまでも関わっている程、儂も暇ではない。とは言え王都をウロウロされるのも目障りだしな。王国魔術指南役を解任した上で王都追放で良いのではないか。」
「伯爵個人への処分とは別に、リヴェラーノ家への処分はいかがされます?」
「リヴェラーノ家は代々、王国魔術指南役を務めてきた。それが剝奪されるだけで処分としては十分だろう。リヴェラーノ家に後継ぎがいるのであれば、家の存続に反対はしない。」
「アムロード卿は本当にそれでよろしいのですか? これまで判明したリヴェラーノ伯爵の行為を考えると、いささか寛大な処分にも思えます。」
「そもそも復讐など儂の性に合わん。それよりも16年前から続く禍根をここで絶ち切る事の方が、よほど重要だ。もっともこちらが寛大な処分をしても、相手がそれに感謝するとは限らないがな。」
「ではもしも相手がまた歯向かってきたら?」
「叩き潰すだけだ。」
アムロード家が厳罰を望まなかった事もあり、結局リヴェラーノ伯爵はエドルが望む通り、王国魔術指南役を解任された上で王都からの追放という比較的軽い処分で済んだ。




