【帰国】
サアラが宿所であるオリソン子爵邸に戻った時、既に日付は変わっていた。
「大変遅くなりました。」
深夜までサアラの帰宅を待っていたエドルに対し、彼女は神妙に挨拶する。
一方のエドルは全く気にしていない。
「別に謝る必要は無い。どうせ向こうが引き留めたのだろうからな。摂政殿下としては積もる話も有ったろうし、無理もあるまいよ。」
サアラ個人としては積もる話どころではない事件があった訳だが、それを父に報告する事はさすがに憚られた。
そんなサアラの内心を知る由もないエドルは冷静に今後の予定を説明する。
「我々は予定通り明日にはここを発つ。王都に戻ったら筆頭秘書官殿と協力して奴が書いた供述書の裏付けを取る事になる。それが終わったら今度は奴の処分を決めなければならない。摂政殿下のおかげで最大の山場は超えたと言ってもしばらく忙しくなるぞ。」
「覚悟しておりますわ、お父様。」
翌朝、全ての予定を終えたアムロード家の一行は慌ただしく公都を出発し、帰国の途に就いた。
結局、エドルとサアラが公都に滞在したのは僅か5日間に過ぎない。
それでも摂政とアムロード家の双方にとって、大きな収穫を得た5日間であった。
第8部 了
およそ10ヶ月の執筆期間と95エピソードを費やして、連載史上最長の第8部が無事にゴールまでたどり着きました。
最後までお付き合い頂きありがとうございました。
第9部につきましては、第8部と地続きの話になります。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。




