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追放ルートを目指します!  作者: 天空ヒカル
第8部 狙われたエドル
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【一夜の再会Ⅱ】

まるで空白の時間を埋めるかのように、クリストファーとサアラは饒舌(じょうぜつ)だった。


「まあ! それでは私の宿所はあのままなのですか?」


「そうだ。机からベッドまで、全てお前がいた時の状態が保たれている。だからいつでも戻って来れるぞ。」


「もうすっかり元通りになっているとばかり思っていましたので、驚きました。」


「何だったらお前の父親にも見て欲しいくらいだよ。」


「・・・冗談でもやめて下さい。」


話をしているうちに段々(だんだん)テンションが上がって来たクリストファーは、またも暴走し始める。


「ところで私たちの結婚が成就する凄いアイデアを思い付いたぞ、サアラ。」


『凄いアイデア? 凄い嫌な予感しかしないんですけど・・・』


サアラは今までの経験から、こういう時のクリストファーがとんでもない事しか言わないのを知っている。


「お前が私の子を()せば、周囲も納得せざるを得ないのではないか?」


『やっぱりぃー!!!』


この世界の王族や貴族の結婚において、結婚より妊娠が先んじるなど前代未聞の事態である。


「殿下・・・寝言は寝てから言われるべきですわ。」


「私の名案を寝言と申したな! サアラ、どうもお前は私が本気でないと思っているようだ。」


そう言うと椅子から立ち上がったクリストファーは、遠慮なく彼女の至近距離まで近付く。


「さて、お前の父親の許可も出た事だし・・・」


グイグイ距離を詰めてくるクリストファーの圧に、サアラは()(すべ)なく圧倒される。


『ち、近い・・・』


「サアラ、もし私がこのままお前を我が物にすると言ったら何とする?」


『そんな事までお父様は許可してません!!』


一方的に迫ってくるクリストファーに対して心の中では盛大にツッコミを入れるのだが、何故か言葉に表す事が出来ない。


サアラは激しく動揺したあげく、口をパクパクさせながら返答する。


「・・・おっ、大声を出します。」


苦し(まぎ)れのサアラの答えに目を丸くしたクリストファーは、次に我慢が出来ないといった様子で笑い出す。


「プッ、ククッ・・・大声を出すか、そうかそうか、それは実に有効な対抗策だ。アハハハ・・・」


あっけにとられるサアラの前でひとしきり笑ったクリストファーは、いきなり真顔に戻る。


「今夜はこれで勘弁してやろう。」


クリストファーはそう言うと彼女の手を取り、手の甲にそっと唇を当てた。


『!!』


不意を突かれたサアラは無言で固まってしまう。


「確か大声を出すはずではなかったか?」


クリストファーの言葉で我に返ったサアラの顔はみるみる赤くなり、目を伏せたまま逃げるようにダイニングルームを去って行った。

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