【一夜の再会Ⅰ】
エドルが去ったダイニングルームには、サアラとクリストファーの二人だけが残された。
サアラは何かを話そうとしたが、彼女をじっと見つめるクリストファーの目はそれを許さない。
やがてクリストファーがゆっくりと口を開く。
「再会したら色々話す事があったはずなのだが、お前の顔を見たらどうでも良くなった・・・お帰り、サアラ。また会えて嬉しい。」
「殿下・・・」
クリストファーの暖かい心情が伝わってきて、彼女もまた胸を熱くする。
「ところでサアラ、明日の予定はどうなっている?」
その質問を予想していた彼女は、顔を曇らせながら返答する。
「申し訳ございません、明日には父と一緒に王国に戻るつもりです。」
サアラの答えを聞いたクリストファーは、あからさまに不満そうな顔をする。
「事件は解決したのだ。しばらくこちらに留まっても良いではないか。」
「そうしたいのはやまやまですが、事件の後始末もございます。それに限定的ですが父の許しも得られましたので、この件が落ち着きましたらもっと気軽に公国を訪れる事が出来ると思います。」
「分かった。その代わり今夜はとことん付き合ってもらうぞ。」
「明日の予定は大丈夫なのですか?」
「お前のためにスケジュールを開けておいたからな。問題ない。」
「それならば喜んでお付き合いさせて頂きます。」
この時サアラは歓迎会が深夜まで続く事を覚悟した。




