【歓迎会Ⅳ】
「では当事者としてはどうか?」
「それにお答えする前に確かめる事がございます。」
そう言うとエドルはサアラに顔を向け、恐ろしく真剣な表情で問いかける。
「サアラ、お前はどうしたい?」
「!!」
「家の事や国の事は考えなくても良い。周りへの配慮を抜きにした、お前の本心はどうなのだ?」
父の問いかけを受けたサアラは最初に動揺し、次に沈黙し、最後に決意を固めた。
「私は・・・私はこのお話しを進めたく存じます。」
彼女の決意を聞いたエドルは怒るでもなく、悲しむでもなく、驚くでもなく、喜んでもいなかった。
『いつの間にか大人になったものだ・・・』
父はただ、娘の成長をしみじみと感じていた。
そしてエドルは摂政の方に向き直り、結論を伝える。
「摂政殿下、私がこれを荒唐無稽な縁談として一蹴する事は簡単です。しかしながら娘のサアラは母親を早くに亡くし、私も不在がちで幼い頃から寂しい思いをさせてきました。それだけに娘の幸せを願う一人の父親として、その願いを叶えてやりたい気持ちはあります。それでもこの結婚には解決すべき障害が数多く残っていると言わざるを得ません。」
摂政は沈黙したままエドルの言葉を待つ。
「あなた方がこの結婚を本当に望むのであれば、二人が協力する事が必要です。二人で協力し、この結婚が両国にとって有益であると、誰もが納得出来る形で示して頂きたい。」
「!」
「お二人がそれを見事に成し遂げたならば、私もこの結婚を祝福しましょう。」
「・・・分かった。卿の挑戦、受けて立とうではないか。」
摂政クリストファーは、決意に満ちた表情で返答した。




