【歓迎会Ⅲ】
「卿はこの縁談をどう見る?」
摂政に正面から切りこまれたエドルは、これを余裕の表情で受け止める。
「まずは私が当事者でなく、第三者としてこの話を聞いたと仮定した場合、恐らく実現不可能と判断するでしょう。」
「何故だ? クロスリート王国とデール公国、両国の和解を象徴する縁談ではないか。」
「最大の問題はアムロード家に跡継ぎが一人しかいない事です。しかもそのたった一人の跡継ぎは男子ではなく女子なのです。この場合、常識的には婿養子を迎えるのが唯一の選択肢になります。そうなれば殿下は条件から外れます。」
「そうか、ではその問題さえ解決すれば良いという事だな。」
「いいえ。問題は他にもあります。」
「申してみよ。」
「殿下は先程『クロスリート王国とデール公国の和解を象徴する縁談』と申されましたが、実際には素直にそう受け取る者と、そうならない者に分かれるでしょう。そう考えればこの縁談は両国関係のみならず。双方の国内においても不安定要因になりかねない危険性があります。だからこそ実現不可能と申し上げました。」
「貴族たちが黙っていないという事か・・・」
「はい。双方の貴族社会に少なからず動揺を与える事になるでしょう。」
エドルの否定的な見解を聞いても摂政は引き下がらない。
「卿が第三者であった場合の見解は分かった。では当事者としてはどうか?」




