【再び公国へⅥ】
暫くして沈黙を破ったのはサアラだった。
「・・・意味不明にも程がありますわ。まさかリヴェラーノ伯爵がお父様に濡れ衣を着させようとしているのでしょうか?」
「・・・いや、違うな。」
先程から無言で考え込んでいたエドルは、サアラとは異なる結論にたどり着こうとしている。
「筆頭秘書官殿、相手の要求はアムロード家の人間がデール公国に赴いて直接説明する事。それで間違いないな?」
「はい。正確には『アムロード家を含めた王国の代表者が使節となり、デール公国で説明する事』になります。」
「こちらが断ったらどうなる?」
「もし王国の代表使節が期限内に来ない場合は、王国はリヴェラーノ伯爵の保護権を放棄したものとみなし、公国の国内法に基いて厳正に処罰するとの事です。」
「期限を切ってきたか・・・それで向こうが設定した期限は?」
「一週間後です。」
「一週間後!? すぐではないですか?」
「ミス・アムロード、だからこそ急いでいるのです。」
アランは緊急呼び出しの理由を説明する。
「これまでは国内問題で済んでいたので様子を見る事も出来たのです。しかし今や状況が一変しました。事は既に国際問題に発展しています。向こうが期限を切ってきた以上、ぐずぐずしてはいられません。」
「お父様。」
サアラはエドルの決断を待つ。
「明日にも王都を発ち、デール公国に向かう。サアラ、お前も同行しなさい。」
「お待ち下さい。いくら公国との関係が改善しているとは言え、アムロード卿はともかく、ミス・アムロードまで公国に向かわれるというのは少々危険ではないでしょうか?」
「筆頭秘書官殿の懸念は理解出来る。しかし儂の考えが正しければ、今回のデール公国訪問に危険性は全く無く、しかも娘を同行するのが正解のはずだ。」
「アムロード卿には何かお考えがある様ですね・・・分かりました。使節団派遣につきましては、先程、陛下の勅許も頂きました。今回は私も使節団の一員として同行いたします。」
「これで決まりだな。準備を急ごう。」
デール公国の公式書簡は王国中枢に衝撃を与え、事態は急激に動き出した。




