【再び公国へⅣ】
兵士たちと共にリヴェラーノ伯爵が退場し、謁見所にはクリストファーとビショップが残された。
「大した名演技でしたな、殿下。」
「どうだ、迫真の演技だったろう? 今頃奴は自分が本当に死刑なると思っているぞ。」
「・・・・・・」
『どこが迫真の演技?』というビショップの冷ややかな目線など、クリストファーは全く気にかけていない。
諦めるようにため息をついたビショップは話題を変える。
「それにしてもまさかリヴェラーノ伯爵がミス・アムロードの殺害を提案してくるとは驚きました。殿下がリヴェラーノ伯爵をその場で切り捨ててしまわれるのではないかと、ヒヤヒヤしましたよ。」
「切り捨てても良かったが、後が面倒だからな。第一そんな事をしたら、せっかくの計画が台無しになる。」
「賢明なご判断です。」
「さてと、これで準備は整った。 いよいよこれからが本番だが、準備は出来ているか?」
「はい、王国宛の公式書簡は既に作成済みです。」
ビショップはそう言うと、一通の書状をクリストファーに差し出す。
書状の内容を最終確認したクリストファーは即決した。
「これで良い。」
「承知しました。それでは早速王国に届けます。」
こうしてリヴェラーノ伯爵の陰謀はデール公国という、サアラたちにとって全く予想外のルートから知らされる事になった。




