【再び公国へⅢ】
「黙れ!!」
クリストファーから一喝を受けたマーティンは、ショックのあまり顔面蒼白になる。
「貴様の企みなど最初から知れている。甘言の裏でアムロード家と手を組み、我が国を陥れようとしているな! そのような手に乗るとでも思ったか? この奸賊め!」
クリストファーの台詞はひどく芝居がかっており、普通に聞けば不自然さを感じる程だ。
しかし精神的に追い詰められたマーティンがそれに気づく事は無かった。
「おっ、お待ち下さい殿下! アムロード家と裏で手を組むなど、誓ってそのような事はございません! 私は本当に貴国の利益のために・・・」
「黙れ下郎! 貴様の与太話など聞く耳を持たぬわ!」
完全にノリノリな状態になったクリストファーの間近に控えるビショップは目を伏せ、笑いを堪えるのに必死だ。
一方のクリストファーは芝居がかった口調のまま、高らかに宣言する。
「マーティン・リヴェラーノを国家転覆罪の容疑で逮捕せよ!」
その言葉を合図に、隠し扉から兵士がわらわらと姿を現し、あっという間にマーティンの身柄を拘束する。
全てはまるで事前に決められていたかのようにスムーズに進んだ。
屈強な兵士に両腕を掴まれたマーティンに対して、クリストファーが引導を与える。
「それから念のために教えておくが、我が国では国家転覆罪は死刑と決まっている。楽しみだな、リヴェラーノ卿。」
それを聞いたマーティンは泣きそうな顔で必死に抗弁する。
「どうか今一度私の話をお聞きください!どうか!どうかお許しを・・・」
なおも大声で叫び続けるマーティンは、謁見所から引きずり出された。




