【再び公国へⅡ】
月明かりの中、アムロード家の馬車は王宮へ向かっている。
王宮周辺は魔法灯による夜間照明が完備されているため、たとえ新月の夜であっても安全に馬車で移動する事が可能だ。
とはいえ昼間でも人通りが少ないこの辺りは、夜ともなれば全く無人と化してしまう。
そんな静まり返った貴族街を進む馬車のキャビンにはサアラとエドルが向かい合わせに座っていた。
車中のサアラは心配そうに問いかける。
「やはりリヴェラーノ伯爵に関するお話しでしょうか、お父様。」
「恐らくな。ただそうであったとしてもこの時間に呼び出すというのは尋常ではない。」
「悪い知らせでなければ良いのですが・・・」
既に話が通っていたのだろう。王宮の入口に到着した二人は一切待たされる事無く、目的の部屋へと案内された。
そこに待っていたのは予想通りの人物である。
「このような夜分にお呼び立てし、大変申し訳ございません。」
「こんな時間に理由もなく我々を呼び出す筆頭秘書官殿ではあるまい。一体何があった?」
エドルは言葉遣いが率直なだけで、別に怒っているわけではない。
それを理解しているアランは、率直な態度で返答する。
「まずは現時点で分かっている事をお知らせします。」
エドルが無言で頷くのを目視したアランは、結論を最初に告げる。
「リヴェラーノ伯爵がデール公国内で逮捕されました。」




