【愚か者の選択Ⅱ】
事情聴取の2週間後
公都中心にある摂政公邸の執務室では、前日に届いたオルドリッジ子爵からの報告を受けて、摂政クリストファーとビショップ宰相が今後の方針を協議している。
「手詰まりだな・・・」
「御意」
王国内での異変に対する調査は難航していた。
クリストファーがオルドリッジ子爵に調査の指示を出してから届けられた報告書は今回で3回目になる。
そしてそのいずれもが「アムロード家や王家に目立った動きは無く、いつも通りである」という内容であった。
しかしこの結果はオルドリッジ子爵の調査能力が低いから起こった訳ではない。
長年にわたり王都に駐在する彼は、王国内に独自の情報ネットワークを構築していた。
その網に引っ掛からないという事は、サアラが直面する問題が極めて秘匿性が高い事を示している。
「オルドリッジ子爵は優秀な人物だが、彼の立場を考えれば調査に専念させるという訳にはいかないしな。」
「やはり専任の調査担当者を王国に派遣し、人員の増強を図るのが得策と思われます。」
「人員の増強には賛成だが問題は人選だよ。これはという適任者がどうしても思い付かない。」
「我が国でオルドリッジ子爵以上に王国の情勢に精通した人物など、そうそういませんからね。」
次の一手を決めかねていた丁度その時、執務室のドアがノックされ、若い書記官が入室する。
「摂政殿下、オルドリッジ子爵より書状が届きました。」
「!」
オルドリッジ子爵からの書状は最優先で届ける様、あらかじめ事務方に指示は出してある。
問題は書状が届いたタイミングだ。
何の変化もないのに、二日連続で報告が届くはずがない。
二人はそれが大きな進展を告げる知らせである事を直感した。




