【事情聴取Ⅷ】
「実行犯の黒幕はリヴェラーノ伯爵ですね。証拠が無くてもあの態度を見れば嘘をついているのは明らかです。」
マーティン伯爵が去り、残されたアランはエドルに私見を述べる。
「そうだな・・・」
エドルの様子から、彼が激高していない事を確認したアランは言いにくそうに話を切り出す。
「実際に命を狙われたアムロード卿にとっては実に腹立たしい事でしょうが、これで相手が引き下がるようであれば、アムロード家も一旦矛を収めては頂けないでしょうか。」
「王家の立場は理解している。向こうが諦めて大人しくするというのであれば、こちらも敢えて事を荒立てたりはしない。」
「アムロード卿の寛大なご対応に御礼申し上げます。」
エドルの答えを聞いたアランは心底ホッとした表情を見せた。
「それに儂もあんな雑魚に簡単に殺されるつもりはない。」
「王国魔術指南役を雑魚と申されますか?」
「向こうの反応は全てこちらの予想通りだった、つまりはその程度の人物に過ぎないという事だ。」
「確かに今日の事情聴取でリヴェラーノ伯爵から感じたのは狡猾さだけで、こちらを唸らせるような要素は皆無でした。」
「命を狙われた上に嘘とごまかしを延々と聞かされたのだから愉快な気分ではないが、あの程度の男に本気で怒るのもバカバカしいと思えてきた。それでも流石にこちらの意図は伝わっただろう。」
そしてエドルは不敵な笑みを浮かべながら低い声でつぶやいた。
「これだけ警告を与えても喧嘩を売り続ける度胸が奴にあるか、向こうの出方が見ものだな・・・」
次回「愚か者の選択Ⅰ」は、8月21日(水) 20時頃に公開予定です。




