【事情聴取Ⅱ】
二日後
面談場所として用意された王宮の一室には、中空に浮かび上がった指示書を前に絶句するアランの姿があった。
「まさかこの様なものが残されていたとは・・・驚きました。」
そしてエドルから指示書の内容について一通りの説明を受けたアランは残念そうに首を振る。
「確かにこれは事件との関連を疑わせる証拠にはなりますが、リヴェラーノ伯爵こそが事件の黒幕である決定的な証拠とまでは言い難い。」
「それは分かっている。儂とてこれだけで相手を屈服させられるとは考えていない。だがこれを示す事で、彼らがこれ以上敵対行動をとらないようにくぎを刺す事は可能だ。」
「それで私に何をせよと・・・?」
「儂の立会いの下、リヴェラーノ伯爵を呼び出して事情聴取をしてもらいたい。」
「・・・聡明なアムロード卿であれば、王家がどちらにも肩入れ出来ない建前である事は十分ご承知のはずですが。」
「無論、承知の上で言っている。」
エドルの表情から、相手が本気である事を読み取ったアランは、一旦ため息をついてから返答する。
「本来であれば『決定的な証拠が無い限り王家は動けない』と言いたいところですが、王家はアムロード家に大きな借りがあります。」
「レラン高原の事か。」
「はい。アムロード家の働きが無ければグリーンヒル砦を攻め落とされた上に、ウィルド王太子の戦死という最悪の結果を招いたかもしれません。」
「その借りを返してくれるというのだな?」
その問いに対してすぐには返答せず、しばらく無言で考え込んだアランはエドルに妥協案を示す。
「それでは召喚状を用いて王家から正式に呼び出すのではなく、あくまでも私的な要請としてリヴェラーノ伯爵から話を聞くという形でいかがでしょうか?その代わりアムロード卿の同席は認めます。」
「それで構わない。」
「加えて幾つか条件がございます。」
「何だ?」
「私的な要請である以上、強制力はありません。相手が断ったらそれまでです。それからリヴェラーノ伯爵への事情聴取は私が行います。アムロード卿はあくまでもオブザーバーとしての参加にとどめて頂きたい。」
「分かった。」
提示した妥協案をエドルがそのまま受け入れた事に対し、アランは明らかにホッとした表情を見せた。
「ありがとうございます。それでは準備が整いましたらお知らせいたします。」
こうして事態はリヴェラーノ伯爵との直接対決という新たな段階に大きく踏み出した。




