【魔法陣の謎Ⅲ】
そして翌日
遺留品が保管されている別館の一室には、4人の作戦メンバー全員が集合していた。
「それでは始めます。」
他のメンバーが興味津々で見守る中、サアラはやや緊張した様子でグレンダが残した4枚のメモ用紙を、昨日確認した通りの方向できっちり重ね合わせる。
すると昨日と全く同じ現象が再び発生し、三次元の指示書が中空に浮かび上がった。
「おぉ・・・」
サアラ以外の3人が思わず感嘆のため息を漏らす中、サアラは残念そうな表情で確認結果をメンバーに伝える。
「私が確認した限りでは、この指示書に特定の署名や家紋といった、個人を識別する情報はありませんでした。」
「そうか・・・あと少しだというのに、実に惜しいな。」
「ただ私が引っ掛かかっているのは、この緊急時の連絡先の記述です。」
サアラはそう言いながら指示書の該当部分を指し示した。
「クワドラングル?・・・人名でしょうか?」
「だがクワドラングルという名前の貴族に心当たりは無いが・・・」
アルフレッドとエドルの会話に割り込んだのはマーサである。
「これは人名ではなく、地名だと思います。」
「でも王都にこんな地名の場所があったかしら?」
サアラの疑問を解くために、マーサは説明を始める。
「『クワドラングル』というのは、正式な地名ではありません。だからお嬢様がご存じ無いのは当然です。元々はそこに昔から建っているモニュメントの名前だったのですが、それがいつの間にか地区の通称として使われるようになったそうです。」
「いくらあなたが王都出身とは言っても、そんな事まで良く知っているわね、マーサ」
「私の実家が近所だったのでたまたま知っていましたが、基本的には地元の人しか使わない通称ですね。地区の正式名称はウィンターフィールドです。」
「待って! ウィンターフィールドって!?」
驚愕するサアラに対して、マーサは真剣な表情で頷く。
「そうです。リヴェラーノ家の王都屋敷があるのは、他ならぬウィンターフィールドなのですよ。」
『つながった!』
攻略は不可能にも見えたリヴェラーノ伯爵の鉄壁の防御を前にしても、サアラは決して諦めずに粘り抜き、遺留品と事件の黒幕を繋げる細い糸をついに手繰り寄せた。
「お父様!」
彼女の叫ぶような呼びかけを受けたエドルは決断を下す。
「よし・・・この指示書を筆頭秘書官殿にお見せしよう。」
今回で本作は200話に到達しました。
これは私の作品の中でも最長記録となります。
ありがたい事に多くの読者様に支持を頂き、そのおかげでここまで書き進める事ができました。
また少し構想を練る時間を頂いて、続きを書き進めるつもりです。
この物語に今しばらくお付き合い頂ければ幸いです。




