【さよなら王都】
「はぁ~、終わった終わった・・・これでようやくお役御免ですよ。」
水晶の間と控えの間を隔てる巨大な扉が閉まり、国王や諸侯の視線から解放されたサアラは両手を挙げて大きく伸びをしながら首を左右に振ってコキコキ鳴らし始めた。
思わず漏れ出したサアラの素直な感想を聞いた両脇の近衛兵士たちは、啞然とした表情で彼女を見つめている。
それはそうだろう。
本来なら世界の終わりを迎えたような顔をしていなければいけない人間がけろりとしているのだから。
だがそんな兵士たちの様子をサアラが気にする事は無かった。
追放された彼女にとって、周りの目や王宮内の噂はもはや過去の話だ。
そのまま兵士たちに付き添われて王宮を出たサアラは、これから始まる新生活に胸をわくわくさせていた。
『時間は無限にある。明日から何をしようかな・・・』
普通、追放を言い渡された貴族は準備に時間がかかるとか、何だかんだ理由を付けて王都に少しでも長く留まろうとするものだが、王都に何の未練もない彼女は、一刻も早く王都を離れたかった。
『そうだ、明日の朝には王都を出発しよう。荷物は後で送ってもらえばいいよね。』
王宮前に待たせていた馬車に乗り込んだサアラは、真っ直ぐアムロード家の王都屋敷に向かっていた。