【遺留品Ⅱ】
「・・・サアラ、サアラ!」
『えっ!?』
自分が何度も呼ばれている事にようやく気付いたサアラは、ハッと我に返る。
「・・・申し訳ございませんお父様、先程から考え事をしておりました。」
「グレンダの遺留品の件か・・・お前が証拠探しを諦めていないのは知っているが、食事の時くらいは気分を切り替えても良いのではないか?」
「そうですね、そうさせて頂きます。」
夕食を再開した二人は和やかな会話をしようとしたのだが、話題は結局リヴェラーノ伯爵関係の事になってしまう。
「ところで、ランストン男爵に依頼していた調査の結果が届いたぞ。」
「いかがでしたか?」
「動物実験レベルだが、魔法陣と触媒を組み合わせた再現テストに成功したそうだ。これで魔法陣の危険性は証明された事になる。」
「まさか人体実験をするわけには参りませんから、この件はこれで終了ですね。」
「こちらは一応の決着がついたが・・・そちらは難航しているようだな。」
「はい。残念ながらお父様に報告できるような証拠は発見できず、何の進展も無いというのが答えになります。」
「当面の危険は排除したのだから、焦る必要はない。お前の気が済むまで調べてみなさい。」
「ありがとうございます。」
エドルにはそう言われたものの、サアラ自身は証拠探しをのんびり進める気にはとてもなれなかった。
父の命が懸かっているのはもちろんだが、それ以上に結論が間近にあるように思えるのに、どうしてもそこにたどり着けない自分に腹が立っていた。
夕食が終わり、その日も別館を訪れようとしたサアラだが、明日の予定を考えると無理は出来なかった。
『明日は王宮でソフィアさんとお会いする予定がありますし、寝不足で失礼が無いように今日はもう休みましょう。』
サアラは焦る気持ちを抑えて、明日に備える事にした。




