【我慢の時Ⅰ】
その夜
夕食を終えたエドルとサアラは、エドルの執務室で今後の方針を話し合っていた。
「グレンダがリヴェラーノ伯爵側に戻ったのか、それとも本当に失踪したのか、今となっては確かめる術もない・・・だがどちらにしても暗殺計画の失敗が向こうに伝わるのは時間の問題だな。」
「仮にグレンダが本当に失踪した場合でも、グレンダはリヴェラーノ伯爵側に定期的に報告を入れていたでしょうから、それが途切れれば遅かれ早かれ、彼らの陰謀が失敗した事に気が付くでしょうね。」
「問題はその後、相手がどう出てくるかだ。」
「これで諦めてくれるという可能性は?」
「もしそうなれば、こちらとしては願っても無い展開だが、それはまずあり得ないな。」
「そうでしょうね、私もそう思います。」
「もしソフィア妃殿下の警告が無ければ暗殺計画は成功し、儂は先代のリヴェラーノ伯爵と同じように『突然死』していた可能性が高い。向こうとしては作戦成功に相当の自信を持っていたはずだ。それをこっちがあっさりと見破った形になってしまったから、かなりのショックだろうな。」
「こちらが相手の罠をどうやって見破ったのか分からないでしょうから、相当の脅威を感じるはずです。」
「だからもう同じ手は使ってこないだろう。」
「本当は運が味方をしたに過ぎないのですけどね・・・ただそうなると相手は諦めてくれそうになく、その上相手の出方も予想がつかないという結論になります。」




