【救いの手Ⅲ】
サアラの言葉の意味が分からず、目をぱちくりさせているジェシーのために、彼女はもう一度分かりやすい言葉で言い直した。
「私たちが今いるアムロード家の王都屋敷よ。」
「このお屋敷ですか!?」
素っ頓狂な声を上げるジェシーに対して、サアラは冷静な姿勢を崩さない。
「そう。つまりこの王都屋敷で今まで通りメイドの仕事を続ける事が、今の貴女にとって一番安全なの。」
「そんな事が本当に出来るんでしょうか?」
「出来るわ。 だって当家で貴女が敵の刺客だった事を知っているのは私と父、それにマーサとアルフレッドのたった四人しかいないのよ。 それ以外の人間は誰も真実を知らないわ。 だから私たちがわざわざ秘密を明かさない限り、貴女がこの王都屋敷で今まで通りメイドの仕事を続ける事は簡単なの。 もちろんお給金は今まで通りお支払いします。」
サアラが伝えた内容を今度こそ理解したジェシーは感激している。
「敵の手先として使われていた私に対してこのように寛大な処置を賜り、感謝の言葉もございません。 何卒よろしくお願い致します。」
「では決まりね。 丁度いいから貴女は明日から別館の専属メイドとして働きなさい。 宿舎もこの小部屋を使うといいわ。そうすれば人目に付かないはずよ。 とにかく決着がつくまでは、例え休みの日でも王都屋敷から一歩も出ない事。 出来るだけ目立たずに生活する事が貴女自身の身を守る上でとても大切です。」
「姫様、何から何までご配慮頂きありがとうございます。ご注意の点、肝に銘じます。」
こうしてジェシーの当面の身の振り方が決まった事で、この日の作戦はようやく終了した。




