【共犯者Ⅲ】
「旦那様!・・・それに姫様まで!」
マーサとアルフレッドに別館まで連行されたジェシーは、作戦本部となっている部屋の中で自分を待っていたエドルとサアラを目にした途端、ガタガタ震え出し、過呼吸のような症状を起こしてしまう。
「おっ、お許し下さい・・・」
どうやら帯剣しているエドルを見て、自分がこの場で殺されてしまうと勘違いしたらしい。
それに気付いたサアラは二人に素早く指示を出す。
「マーサ、彼女を椅子に座らせてあげて。 爺は水をお願い。」
椅子に座り、アルフレッドから手渡された水を受け取った彼女は、マーサに背中をさすられながら水を飲み、呼吸を整えようと努力する。
相手が落ち着くのを待つ間に、サアラは小声でエドルに耳打ちする。
「お父様、ここは私が・・・」
エドルは黙って頷く。
サアラは彼女がこれ以上緊張しないよう、出来る限り柔和な表情で話しかける。
「少しは落ち着いたかしら? 話は出来る?」
「はい・・・何とか・・・」
「貴女とグレンダが父を害そうと狙っていたのは知っています。」
ジェシーはサアラの言葉にビクンと反応すると、床に額をこすり付けるような勢いで頭を下げる。
「誠に申し訳ございません! どうか命ばかりはお助けを・・・」
「ジェシー、どうやら貴女は何か勘違いしているようだから最初に言っておきます。 まず当家は貴女たちを傷つけたり拷問したりするつもりはありません。それどころか場合によっては貴女たちが重い罪に問われないように出来るだけ働きかけるつもりよ。」
「えっ?・・・」
ジェシーはポカンとした表情で、サアラを見つめる。
「安心しなさい。貴女は当家にとって大切な生き証人です。酷い扱いをする理由がないわ。」
サアラは穏やかな表情のまま、話を続ける。
「貴女にはいずれしかるべき場所で証言してもらう事になるでしょう。 貴女がもし、そこで正直に証言してくれるつもりがあるなら、その後の審理において、あなた方実行犯への訴えについては取り下げても良いと考えています。 そうすれば恐らくあなた方への最終的な処分は王都からの追放で済むはずです。」
「旦那様を殺そうとした私どもにそのようなご厚情を頂けるなんて、ありがとうございます!・・・ありがとうございます。」
ジェシーは泣きながら何度も礼を述べる。
それからしばらくして落ち着きを取り戻したジェシーは、サアラの事情聴取に素直に応じ始めた。




