【現行犯Ⅲ】
「おっと、どこに行かれるつもりかな? お嬢さん。」
グレンダが開けたドアの外には一人の騎士が立ちはだかり、彼女の行く手を塞いでいた。
逃げ出そうとする彼女を押し戻すよう様に入室したアルフレッドは、ドアを閉めるや否や有無を言わさずグレンダの両手を掴み、その自由を奪う。
「あっ、イヤッ!」
「マーサ殿!」
アルフレッドが捕まえたグレンダに駆け寄ったマーサは、必死に抵抗する彼女にお構いなく触媒の押収を始める。
「おとなしくしなさい!」
グレンダの懐に無理やり手を突っ込んだマーサはついに目的の物証を手にした。
それはガラス製の小さな薬瓶だった。
その薬瓶には緑色の液体が入っている。
マーサは取り出した薬瓶をグレンダの目の前に差し出すと、厳しい口調で質問する。
「グレンダ! これは何ですか!?」
「し・・・知らない。」
「知らないですって?・・・よくもぬけぬけとそんな事が言えるものですね! そのような噓が通る訳ないでしょう!? だったら何で絨毯を剝がしたの!?」
「マーサ殿、あまり時間がありませんぞ。」
「そうでしたね。」
アルフレッドにたしなめられたマーサは尋問を中止した。
一方、アルフレッドは手慣れた様子でグレンダの両手両足を縛り、猿ぐつわを嚙ませた。
「これで良し・・・マーサ殿、行きましょう。」
グレンダをそのままにして、執務室を出た二人は外からドアに鍵をかけると、次の目的地に急いだ。




