【現行犯Ⅰ】
30分後
エドルの執務室の前に姿を現わしたグレンダは、まず目前のドアをノックし、中から反応が無い事を確認する。
そして彼女はドアを開錠し、両手に掃除用具を持ちながら部屋の中に入った。
「失礼いたします。」
執務室のドアを閉め、絨毯の上に掃除用具を置いたグレンダは大きな声で挨拶したが、今度も反応は無い。
グレンダは表情を変えずにテキパキと部屋の清掃を行っていく。
ここまでの彼女に不審な動きは見られない。
異変が起こったのは清掃を終えたグレンダが執務室を去る直前である。
仕事を終えた彼女の表情が急に険しくなり、誰もいないはずの部屋の中をきょろきょろと見回し始める。
人の気配が無い事を確認したグレンダは迷う事無く絨毯を剝がし始めた。
絨毯が剝がされ、むき出しになった木の床には一枚の紙が置かれている。
それを見た彼女は僅かに笑顔を見せながら呟く。
「よし・・・」
魔法陣の存在を最終確認した彼女は剝がした絨毯を急いで元の状態に戻すと、緊張した表情のまま懐のポケットの中に手を入れ、何かを握りしめた。
その瞬間である。
「何をしているの!?」
グレンダ以外は誰もいないはずの部屋に、女性の大声が突然響いた。




