【反撃へⅢ】
「それにしてもまさか『透視能力』とはな・・・これがもし狙った相手を狙った時間で透視できるというなら、その価値は計り知れないが、今の話を聞く限り、残念ながら実用性は低いと言わざるを得ない。儂は運が良かったな。」
サアラの報告を聞き終わったエドルは、そう率直な感想を述べる。
「私も同感ですわ。」
「ただそうであったにせよ、儂はソフィア妃殿下に大きな借りを作った事には変わりない。どこかでお返ししたいものだ。」
「お父様のお気持ちは良く分かりますが、今は目前の危機を回避する方が先決ですわ。ソフィア妃殿下へのご恩返しは、その後でも遅くはございません。」
「そうだな・・・それにしても本来ならくつろぎの場である王都屋敷の中で常に刺客から命を狙われるというのは決していい気分ではないが、場合によっては長期戦を覚悟しなければならんだろう。」
「いっその事、新しいハウスメイドの荷物を気付かれないように検査したらいかがでしょう?」
そのアイデアに対してエドルは暫く考えた後、首を横に振る。
「・・・危険だな。魔法陣の発動に必要な触媒が特定できていない今の状況で荷物検査を強行したところで、良い結果が得られる可能性は低い。それにもし荷物検査をした事を相手に気付かれたら元も子もなくなる。」
「なるほど・・・確かに『相手に気付かれないように』という部分が想像以上に難しそうですね。」
「そういう事だ。」
この日、父と娘は問題の執務室で深夜まで意見交換を続けるのだった。




