【城壁都市】
ランドンは町全体が城壁に囲まれた城壁都市である。
その歴史は非常に古く、クロスリート王国の成立以前からランドンの町は存在していた。
この土地がクロスリート王国に統一されるはるか前より、アムロード家はこの領地を治めていた。
アムロード家の祖先が、その当時勢力を拡大していたクロスリート王国の王家に臣従を誓い、王国の一部となる事で自領の安定を図ったのだ。
そのような経緯があるため、アムロード家は伝統的に独立心の強い家柄である。
ランドンの城壁はクロスリート王国成立以前の戦乱の時代に、外敵の侵入を防ぐ目的で造られたものだ。
いざという時にはランドンから外へと通じる三つの門を閉じるだけで、強固な防衛拠点が完成する。
サアラを乗せた馬車は外に開かれた三つの門の内、最大の門である北門からランドンの町に入ろうとしていた。
町の各門には衛兵が配置され、人や物資の出入りを監視している。
サアラ一行の帰還については、事前に早馬で知らせが届けられていたため、彼女を乗せた馬車はほぼノーチェックで門を通過し、町の中に入った。
王都であるオールドリートと同等とまではいかないものの、ランドンは相当大きな町である。
アムロード家の繁栄を象徴するかのように、町の中は活気にあふれていた。
『三年前と同じだわ・・・』
サアラは馬車の中から昔と変わらない町の様子を見て安心した。
しばらくしてサアラ一行は城の入り口に到着した。
「城」とは、ランドン中心にあるアムロード家の居館の事を指している。
そのため厳密には城ではないのだが、ランドンの住民はここを「お屋敷」ではなく「お城」と呼んでいる。
実際、その外観は城そのものなので、町の人がそう呼ぶのも無理はなかった。
城の入り口で馬車を降りたサアラに、城を警備する衛兵たちが近付いて来る。
「お帰りなさいませ、姫様。」
サアラを迎えてくれた衛兵たちも昔から知っている顔ばかりだ。
そして衛兵の先導に従い、彼女は三年ぶりに城内に足を踏み入れた。




