【ソフィアの魔法Ⅴ】
そこまで説明を受けて、サアラはようやく相手が言っている事を理解する。
狙った相手を透視出来ないのであれば、視えるといってもその内容はある意味運任せであり、それが実際に役立つ場面は非常に限られるだろう。
そうであればエドルの例は非常に幸運だったという事になる。
「・・・そうしますとバラバラの時間帯にバラバラの内容のビジョンが勝手に降ってくるようなイメージでしょうか?」
「ええ、その理解で基本的には間違っておりません。ただランダムとは言っても法則性が皆無という訳でもないのです。」
「そうなのですか!?」
「まず私に視えるビジョンは、自分自身か自分に関わっている人間の事象に限定されます。そしてそれらの事象が『もう起こってしまった』のか『まだ起きていない』のか、どちらなのかは分かります。
今回の件であれば、最初に私が見たビジョンは『見知らぬ部屋で見知らぬ女性が、絨毯の下に魔法陣のような模様の描かれた紙を置く』というものです。これについては『既に起こっている事象』として感知しました。」
「しかしそれだけでは、父の執務室を見聞きした事がないソフィアさんが、その部屋を父の執務室であると推定する事は不可能なのではありませんか?」
「ええ、その通りです。決定的だったのは二番目に視えたビジョンです。」
「二番目のビジョン?」
「最初のビジョンから数日後に、再び同じ部屋のビジョンが視えました。ただし今度は絨毯の上でアムロード卿が倒れているというものです。」
「!」
「幸いにもこれは『まだ起こっていない事象』として感知しましたが、これがただ事では無い事を直感した私は、急いでアムロード卿との面会を求めました。そこから先はサアラ様がご存知の通りです。」
「・・・分かりました。これまでのお話はソフィアさんが私を信頼して明かして頂いた秘密であると十分理解しています。しかし今回は父の命が掛かっています。当事者である父にだけはこの秘密を打ち明けたいのですが、構わないでしょうか?」
「他ならぬサアラ様の頼みとあれば、断るわけには参りませんわ・・・ただしアムロード卿以外にはくれぐれも他言無用に願います。」
「ありがとうございます!妃殿下の秘密は決して口外しませんし、父にも守らせます。」




