【ソフィアの魔法Ⅱ】
「その事ですか・・・」
「レラン高原で何が起きたのか、ウィルド殿下から全て伺いました。サアラ様の迅速な決断が無ければ、夫の命は無かったでしょう。どのように感謝しても足りるものではありません。」
「あれは身体が勝手に動いてしまって、たまたま成功したから良かったものの、後で周りから散々叱られました・・・それにソフィア妃殿下、私は臣下として当然の事をしたまでです。わざわざお礼を言って頂く程の事ではありません。」
「当然などではありませんわ! 確かに建前としてはサアラ様の言われる通りでしょう。しかしそれを実際に命がけでやってのける人間が一体どれ程おりましょうか!? あのような事はサアラ様でなければ為し得ない行いです。」
この件について、ソフィアに引き下がる気が無い事を理解したサアラは、やむを得ず自分から譲歩する。
「承知しました。 それでは妃殿下のお気持ちだけ、ありがたく頂戴致します。」
「いいえ、あなたは夫の命の恩人です。お気持ちだけというわけには参りません。このお礼はいずれ必ずさせていただきます。」
サアラはあっけにとられると同時にこれ以上の抵抗を諦め、反論しなかった。
ソフィアに対して、下手な謙遜が通用しない事は明らかだったからだ。
『普段は穏やかに見えるソフィアさんに、こんな一面があったのね・・・』
サアラはソフィアの意外な一面を発見した気分だった。




