【ソフィアの魔法Ⅰ】
「ようこそおいで下さいました、ミス・アムロード。」
「お招きありがとうございます、ソフィア妃殿下。」
部屋の中にいるのはサアラとソフィアだけだ。
堅苦しい挨拶を終えた二人は、どちらからともなく笑い出す。
「ずるいわソフィアさん、先に笑い出すなんて。」
「違いますよ。先に笑ったのはサアラ様の方です。」
二人がいるのは王太子妃が個人的な客をもてなすための談話室である。
そのためソフィアのプライベートルームと言っても良い空間だ。
ウィルド王太子とソフィアとの結婚式の直後にレラン高原に出陣し、戻ってきたら今度は王国代表としてデール公国に旅立つという目まぐるしい日々を送っていたサアラにとって、この部屋に招かれるのは初めての経験だ。
和やかな雰囲気の中、ソファーに腰を落ち着かせた二人は、お茶を飲みながら久しぶりの再会を喜び合う。
「ソフィアさんと最後にお会いしたのは何時だったかしら・・・」
「サアラ様は、デール公国に出立する直前に王宮に挨拶に来ていますから、その時以来ですね。」
「そうなると2か月以上経つのね。このところあまりにも色々あり過ぎて時間感覚がおかしくなってるみたい。」
「あれは国王陛下も出席される公式行事でしたから、個人的にお話する事は出来ませんでした。」
「そうでしたわね。」
「改めて、無事のご帰国おめでとうございます。」
「ありがとうございます。ただせっかくデール公国まで行ったのに、成果を出せないまま帰る事になったから、不完全燃焼の気分ですけどね。」
「サアラ様としてはそうかもしれませんが、私は元気そうなお顔が見られただけで嬉しいです。私、サアラ様が向こうで酷い目に遭っているのではないかと、ずっと心配していたんですよ。」
「王国の代表として行ったのだから、酷い目に遭うはずが無いわ。実際、向こうの人は皆さん親切にしてくれたし、身の危険を感じるような事は無かったわね。」
「それを聞いて安心しました。ところでデール公国とはどのような所でした?」
「公国の内を自由に見て回れる立場では無かったし、公都ではほとんどの時間を摂政公邸で過ごしていたから、正確な評価をするには情報が少な過ぎるけど、少なくともデール公国に悪い印象は受けなかったわ。」
「友好を結ぶ事は可能だと・・・」
「戦争したばかりの国と和解するなんて、何をバカなと言う人も多いでしょうけど、実際に相手国に行った事で初めて分かる事もあるわ。両国は同じ価値観を共有できるし、領土問題さえ解決できれば、友好国になれると思う。」
「レラン高原の戦いで死にかけたサアラ様が言われると、説得力がありますね。」
ソフィアはそう言うと、姿勢を正してサアラに礼を述べる。
「ミス・アムロード、レラン高原の戦いでは我が夫、ウィルドを助けて頂き、本当にありがとうございました。」




