【帰国報告Ⅱ】
「私の留守中に起こった事件の内容につきましては父から聞いております。」
「そうですか・・・私もソフィア妃殿下やアムロード卿からお話を伺った時は、本当に驚きました。何しろこの問題は16年前に決着が付いていると関係者の誰もが思い込んでいましたからね。」
「こちらは当主が狙われたのです。当家としては絶対に放置できない問題です。」
「アムロード家のお立場としては、それは当然のご判断でしょう。私も個人的には災難に遭われたアムロード家に同情しておりますし、リヴェラーノ伯爵家の行為には憤りを感じています・・・ただご存知の通り王国では貴族同士が殺し合うような私闘こそ国法で禁じていますが、そうではない争いについては、基本的に王室は不干渉です。」
「それは存じております。」
「ですからリヴェラーノ伯爵家を公に糾弾するためには、リヴェラーノ伯爵が国法を犯している事をあなた方自身で証明する必要があります。特に今回は王家に直接危険が及んでいるわけではありません。もしリヴェラーノ家が王家に危害を加えたという事であれば、こちらも直ちに行動しますが、これは今のところ貴族同士の争いで収まっています。今回の場合であれば仕掛けられた魔法陣が有害なものである事、さらに魔法陣を仕掛けたのがリヴェラーノ家である事、この両方が証明されない限り、王室が動く事はありません。」
貴族同士の争いに王室が不干渉というのは、一見、突き放した態度に見えるが、王室の立場を考えれば当然の事だ。
もし王室が一方の貴族だけの肩を持つという事になれば、貴族同士の争いに王室が巻き込まれる事になる。それは最悪、国を二分する事態になりかねない。
そのため貴族同士の争いは貴族同士で解決させる。
国の安定を保つためには仕方がない事なのだ。
アランとの会談を終え、王都屋敷に帰ろうとしたサアラは王宮を出る直前、メイド服を着た若い女性に呼び止められる。
「お帰りのところをお呼び立てして申し訳ございません。ソフィア妃殿下がミス・アムロードをお待ちです。」




