【帰国報告Ⅰ】
翌日、サアラは王室筆頭秘書官のアランに面会するため王宮を訪れた。
デール公国との停戦協議の代表として経過報告を行うのが面会の主目的である。
もっとも停戦協議に具体的な進展があったわけではないので、報告事項はさほど多くない。
サアラの報告は短時間で終了した。
「・・・せっかく公国まで派遣頂いたにもかかわらず、具体的な成果が上げられず申し訳ございません。」
「今回は交渉途中でこちらがミス・アムロードを呼び戻した訳ですから、仕方のない事です。元々あまりにもこちらに有利な話でしたし、成立すればそれに越した事は無いというレベルの交渉でしたからね。公国が停戦協議の前提としていたミス・アムロードの公都駐在が無くなった以上、交渉は暗礁に乗り上げるでしょうが、ミス・アムロードが気に病む事ではありませんよ。」
「ありがとうございます。そう言って頂けると気が休まります。」
「ところで再度確認しますが、公国の内部は安定しており、摂政の統治は盤石であるという事でよろしいですね。」
「はい、私が見聞きした限りではそうでした。特別目新しい情報ではないと思いますが・・・」
「いえいえ、公国駐在のオリソン卿からも『公国内部に争乱の兆し無し』という報告を毎回受けていますからね。ミス・アムロードの証言はその報告を裏付ける傍証として、十分役に立っていますよ。それにこうして地道に集めた情報の99%は既に知っているか、知ったとしても何の役にも立たない無意味な情報のいずれかです。」
「空振りばかりという事ですか?」
「ええ、情報活動とは本来そのようなものです。しかし残りの1%があるが故に、絶対におろそかにする事はできません。」
本当は摂政クリストファーからの求婚という特大の情報があるのだが、それを何時、誰に伝えるかについては判断をエドルに一任しているため、この場では口に出さない。
公式の用件が終わったところで、二人の話は非公式であるもう一つの本題に移った。




