【隠された野望Ⅳ】
「・・・何というか、実に驚くべき話ですね。」
「ああ、恐らくソフィア妃殿下は何らかの魔法が使えるのだろうな。そうでなければ一連の動きは説明がつかない。」
「お父様、私もう一つ心配事があるのですが。」
「何だ?」
「魔法陣の書かれた紙が一つとだけは限らないと思いませんか? 敵の立場から考えれば、失敗した時の保険のために複数の場所に仕掛けを置いておきたくなるものです。」
「その懸念については儂からもソフィア妃殿下にお話申し上げた。彼女の答えは『それはない』だそうだ。」
「妃殿下は『それはないと思う』ではなく『それはない』と言われたのですね。」
「そうだ。あれほど正確に紙片の位置を言い当てられた妃殿下が断言されるのだ。信じるしかあるまい。」
「賛同しますわ。それでこの事を知っているのは?」
「アムロード家では儂とお前の二人だけと考えて良い。マーサには新しい使用人の調査を依頼しているが、彼女にすら詳しい事情は話していない。後は王宮の方だが、ソフィア妃殿下を始めとした王族の他には王室筆頭秘書官のアランだけは事情を承知している。」
「屋敷の中に内通者がいる可能性が高い以上、情報を厳しく制限されるのは賢明なご判断かと存じます。」
「お前が言う通り、ここから先は極めてデリケートな対応が要求される。さらにこの問題を解決するためにはソフィア妃殿下との連携が必要不可欠だ。そしてその適任者と言えばお前以外には考えられない。」
「分かりました、そちらについてはお任せ下さい。私が戻りましたからにはアムロード家を護るために全力を尽くしますわ!」
サアラは力強い口調で決意を表明した。




