【隠された野望Ⅱ】
「これを秘密裏に魔法の専門家に見せたところ、魔法陣単体では何の役にも立たないそうだ。恐らく何らかの触媒と組み合わせる事で効果を発揮するのではないかという話だが、具体的にどんな触媒と組み合わせたらどのような効果を発揮するかについては分かっていない。」
「どのような効果を発揮するのか分からないって、そのような危険な代物を何故そのままにしておくのです!?」
「こちらが魔法陣の存在に感付いた事を敵側に悟らせないためだ。」
「それにしたって・・・」
「心配するな。魔法陣には細工を施してあるから、今は魔法陣に似たただの紙切れに過ぎない。」
サアラが少し安心した表情を見せた事を確認したエドルは、表情を引き締めて話を続ける。
「儂の執務室は王都におけるアムロード家の心臓部と言うべき場所だ、ここにこのような仕掛けを施せたという事が最大の問題だ。内通者がいなければ絶対に不可能な話だからな。」
「内通者の目星は付いているのですか?」
「常識的に一番怪しいのは、最近になって王都屋敷に雇われた人間という事になるが、該当する数名の人間がリヴェラーノ伯爵家と繋がりがあるかについては確認中だ。」
「もしクロだったら?」
「もし繋がりが判明すれば、そのまま泳がせて相手が動き出すのを待つ。敵だって危険を冒してここまで準備したんだ。必ず止めを刺しに来るはずだ。」
「そこで勝負をかけるのですね。」
「向こうも注意深く進めるだろうから、さすがにリヴェラーノ伯爵本人が止めを刺しに来る事は無いだろう。それでも決定的な証拠を掴むチャンスはその時しか無い。犯人を現行犯で捕らえ、同時に組み合わせる触媒の押収に成功すれば満点だ。証人と物証の両方が揃っていれば、リヴェラーノ伯爵家を追い詰めるための決定的な材料になるからな。」
「分かりました。それにしても不思議でならないのは、お父様は何故魔法陣の存在に気付く事が出来たのですか?絨毯の下なんて偶然見つけられるような場所ではないですよね。」
「もちろん偶然などではない。仕掛けが判明したのは今から十日前だ、それも実に意外なルートから伝えられた。」




