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【再現テストⅡ】
それから数時間後の夜が明ける直前になって、侵入者の男は再び西の離れに姿を現わした。
今度は迷わずに応接室に戻った男は、真っ先にウサギの様子を確かめる。
ウサギは眠るように死んでいた。
予想通りの結果を得た男は大きく頷いた後に低い声でつぶやく。
「ハンナ・アムロード、つくづく恐ろしい女だ・・・」
実験を終えた彼は死んだウサギを籠に戻すと絨毯の下に置いた紙を回収し、周りを見回して忘れ物が無いかを慎重に確認した。
手落ちが無い事を確認した彼は、最後に籠と薬瓶の入ったカバンを持ち、今度はゆっくりと静かに応接室から立ち去った。
西の離れから徒歩で近くの空き地に移動した男は、そこでマントとフードを脱ぐと、繋いでおいた馬に騎乗した。
既に夜は白み始めており、マントとフードを脱いだ事で、男の外見が明らかになる。
年は30代だろうか、身に付けている服装から彼が貴族である事は明白だ。
『これで事件の真相は証明された。アムロード家には相応の対価を支払わせてやる!』
貴族の男は復讐心をたぎらせていた。




