【再現テストⅠ】
アムロード侯爵家の王都別邸である、通称「西の離れ」
王都の外れにあって日中でも人通りが少ないそこは、夜になればまるでゴーストタウンのような場所になる。
西の離れがモントレイ家に貸し出される少し前の深夜、どこからともなく現れた一人の人間が西の離れへの侵入を試みようとしていた。
西の離れは無人となって久しいため、侵入そのものは容易である。
それでも侵入者は万全を期して全身を黒いマントで包み、頭を黒いフードで覆っているため、性別すら明らかではない。
侵入者は難なく建物内部へと入り込んだ。
「恐らくここだな。」
その声は低い、男の声だった。
迷った末に、かつて応接室として使われていた部屋をようやく探し当てた侵入者は、確認する様に独り言を漏らすと、すぐに応接室の絨毯を剥がし始める。
応接室には調度品も残されているため、一人で剥がすのは容易ではないが、侵入者の男はナイフを使いながら器用にそれを行っていく。
彼は絨毯を剥がしながらその裏側や、剥がされた後の木の床をしきりに確認している。
「あった! 予想通りだ。」
侵入者の男は絨毯の裏に貼り付いていた手の平程度の大きさの紙を慎重に剥がすと、それをランプにかざす。
紙は既にボロボロに劣化しているため、何が書いてあるかも判然としないが、それでも模様らしきものが辛うじて見て取れる。
彼はニヤリと笑うと懐から真新しい紙を取り出し、それをそっと同じ場所に置く。
その紙は白紙ではなく、独特の模様が丁寧に書かれていた。
侵入者の男は絨毯を手早く元に戻すと持参した籠の扉を開けた。
籠の中に入っていたのは生きたウサギである。
彼はウサギが逃げ出さないように、ウサギの首に繋がれた革製の紐を近くの調度品の足に縛り付けると、満足そうにつぶやく。
「準備完了」
侵入者の男は最後に自分のカバンからガラス製の薬瓶を取り出して蓋を開けると、中に入っていた緑色の液体を注意深く絨毯の上に垂らした。
彼は液体が絨毯の上に数滴落ちた事を確認すると、息を止めたまま一目散に応接室から脱出した。




