【王都の惨劇Ⅲ】
「かもしれない?」
「その時、西の離れにいた使用人は口封じのため、全員が殺されていた。だが不思議な事に彼女だけは何の外傷も見当たらなかった。」
「!」
「同じようにリヴェラーノ伯爵とその部下たちの身体にも全く外傷は無かった。にもかかわらず、屋敷にいた人間はことごとく死んでいたんだ。」
「・・・一体何があったのでしょう?」
「だから本当の所は、そこで何が起こったのかについて、未だに分かっていない。現場の関係者が全員死んでしまったので確かめようが無いんだ。」
「・・・・・・」
「先程言ったように王国では貴族同士の私闘を禁じている。そのため事件を知った王室の判断で表向きリヴェラーノ伯爵や彼女は事故死という扱いになり、私闘は無かった事にされた。そして惨劇の舞台となった西の離れはそのまま放棄された。」
「それが西の離れが使われていなかった本当の理由なのですね。」
「事が事だけに、この事件は極秘に処理されたからな。今、お前に話した真相を知っているのは、亡くなった前国王と王室筆頭秘書官のアラン、それにただ一人の生き証人であるアルフレッドを含めたほんの数名に過ぎない。家令のマリスでさえ知らない話だ。」
「お待ち下さい。先程お父様は関係者は全員死んでしまったと言われましたが、生き証人がいたのですか?」
「アルフレッドは事件の直前に現場を脱出した。お前の母親からお前を逃がす様、依頼されたのだ。その生き証人のおかげで、今話した内容までは事実が明らかになった。しかしそのアルフレッドも最終局面においては現場にいなかった。」
「まさか私も関わっていたなんて・・・」
「お前はまだ生まれたばかりだったからな。記憶が無いのは当然だ。他の当事者は、全員があの惨劇で死んでしまった。これは王国の最高機密であり、まだお前に明かすつもりは無かったのだが、事情が変わった。そしてそれこそが、お前が滞在先のデール公国から急遽呼び戻された理由でもある。」
エドルの話はいよいよ核心に近付こうとしていた。




