【探索】
「探せ! 必ずまだ中にいるはずだ。」
彼らが屋敷を急襲してから既に1時間が経過している。
うっすらと血の匂いが漂う中、完全武装した10名以上の兵士たちがしらみつぶしに探索を続けていた。
いくら邸内が広いとは言え、そろそろターゲットが見つかっても良い頃だ。
目当ての人物を発見する事が出来ない中、臨時の指揮所として使われている応接室に陣取った突入部隊の指揮官は次第に焦りの色を濃くしていた。
そんな時、指揮所に一人の男が入ってくる。
「まだ見つからないのか?」
「これはリヴェラーノ卿、用事はお済みですか?」
「こちらの用件は大体片が付いた。それよりもそちらの状況はどうだ?」
「はい、残念ながらターゲットであるハンナ・アムロードは今のところ発見できておりません。しかしながら事前に出入口は完全に固めていますので、相手を逃す事はあり得ません。」
指揮官から言い訳混じりの説明を聞いたリヴェラーノ伯爵の表情は冴えなかった。
『こちらの知らない脱出路があるのかもしれないな・・・失敗か?』
彼が善後策を考えようとしている事に気が付かない指揮官は話を続ける。
「屋敷の者は全て始末しましたが、敵の残党が残っていないとも限りません。用件がお済みという事であればここはまだ危険ですので、リヴェラーノ卿には安全な場所までお戻り頂きたく。」
「ありがとう。だが心配には及ばない。例え少数の残党が反撃したところで、そう簡単に討ち取られたりはしないよ。」
「しかし・・・」
指揮官が何かを言おうとしたその時、不意に部屋のドアが開いた。
「私に何か御用ですか? リヴェラーノ卿。」
ドアを開けて入って来たのは、彼らの標的その人だった。
次回「最終実験」は、1月31日(水)20時頃に公開予定です。




